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成形品割れ


ケミカルストレスクラック

写真:ケミカルストレスクラック

 ケミカルストレスクラックは、樹脂(材料)の引張強度以下の引張応力で発生する、典型的な脆性破壊です。 成形品において、引張応力発生箇所(荷重がかかっている箇所)に薬品が付着・接触した場合、時間経過を伴って薬品と応力との相乗作用にて割れが起る現象をケミカルストレスクラック現象と言い、この割れをケミカルストレスクラックと呼んでいます。 割れ面は滑らかで、顕著な場合、鏡面状態を示します。

 この発生メカニズムについては『応力存在下(荷重がかかっている状態)で分子間に隙間が生じ、この隙間に薬品が浸透し、分子間凝集力(分子間の強い結びつき)が低下し、分子のすり抜けが起ることによりクラックが発生する』と言われていますが、未だに完全に解明はされていません。

 ケミカルストレスクラックは、薬品と応力のどちらか一方を排除すれば、発生しません。

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ケミカルストレスクラックの同意語

同意語として以下のものが挙げられます。

  • 環境応力き裂あるいは環境応力破壊(Environmental Stress Cracking 略してESC)
  • ストレスクラック(応力き裂あるいは応力破壊)
  • ソルベントクラック(溶剤き裂あるいは溶剤破壊)

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割れの事例及び対策

軟質塩ビ、軟質パッキン類との接触

原因

 軟質塩ビ、軟質パッキン類には可塑剤が添加されており、これら可塑剤はケミカルストレスクラック発生の代表的な薬品。 軟質塩ビ製品にはビニールホースや電気コード等もある。

対策
  • 電気コード類のようなものには、コードにポリエチレン、シリコンゴム、エチレン・ プロピレンゴム等のカバーを付ける、あるいは被覆を行う。
  • パッキン類はシリコンゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素系のものを使用する。 軟質塩ビとの接触が避けられない場合は、材料を耐薬品性グレードに変更する。

金属インサート成形及び金属部品圧入

原因  金属部品は、製造工程で使用されるプレス油、切削油、防錆油等の加工油が付着していることが多い。 脱脂が不充分な場合、これら加工油がケミカルストレスクラック発生の薬品要因となる。 金属部品と接触する樹脂部には、成形残留応力や圧入による膨張力が存在し、これらがケミカルストレスクラック発生の応力要因となる。
対策
  • 金属部品の脱脂処理を完全に行う。
  • 金属部品を予備加熱処理して使用する。

ネジ締付け

原因   ネジ締付け個所は比較的大きな応力が発生します。 特に皿ネジの場合は過大応力発生の可能性が高い。 これらの応力はケミカルストレスクラック発生の応力要因となり、この箇所に薬品が付着した場合、割れが起ることとなります。
対策
  • 皿ネジを使用しないようなデザイン形状とする。
  • ワッシャーを併用する。
  • 適性な締付けトルクにてネジを締付ける。

成形品のネジ山形状

原因

 樹脂製配管接続部品にはネジ山形状箇所があり、この樹脂製ネジ部品を締め付けて部品を接続する。 過度に締め付けると、大きな応力が発生する可能性が高く、特にネジの谷部分には応力集中が起こる。 この応力発生箇所に薬品が付着した場合、割れが起こる。

対策

 適正な締付けトルクにて締め付ける。 適性トルクでも割れが発生する場合には、材料を耐薬品性グレードに変更する。

成形品のゴミや汚れを落とすための洗浄剤の使用

原因   成形品のゴミや汚れを落とすため、種々の洗浄剤が使用されることがある。 一般的に洗浄剤には揮発性の薬品(アルコール類)が含まれており、これらはケミカルストレスクラック発生の薬品要因となる可能性が高い。 特に薄肉部や偏肉部は成形残留応力があり、この部位に洗浄剤が付着した場合、割れが発生することがある。
対策   洗浄剤を水で希釈して使用する。

厨房備品

原因  台所、飲食店等の備品は植物油の付着の可能性が高い。 植物油はケミカルストレスクラック発生の代表的な薬品です。
対策

 材料を耐薬品性グレードに変更する。

トイレ及びバス(風呂)用品

原因   トイレ及びバス(風呂)にて使用される洗剤は、 一般的にケミカルストレスクラック発生の薬品となるものが多くある。
対策

 材料を耐薬品性グレードに変更する。

金属部品の摺動箇所に使用されるオイル・グリースの付着

原因  これらの油脂は、種類によってケミカルストレスクラック発生の薬品要因となるものがあります。 これらの油脂が隣接する樹脂の応力発生箇所に付着した場合、割れが発生することがあります。
対策   フッ素系のオイルやグリースの使用。

※ 耐薬品性グレードの選定につきましては、当社の営業部門までお問い合わせ下さい。

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耐薬品性試験(ケミカルストレスクラック性確認試験)

 写真に示すように、一定の曲率を持つ冶具に試験片を取付け、薬品を塗布します。 一定の環境下に一定時間放置し、クラックの発生、物性劣化を確認します。 この試験方法を Bending Form定歪法と呼んでいます。


写真:耐薬品性試験治具
・試験条件

  • 歪領域 : 0.2〜1.0%(0.1%間隔) 1.2〜1.6(0.2%間隔)
  • 試験環境 : 温度23±2℃
  • 湿度 : 50〜60%
  • 放置時間 : 48時間
  • 試験片形状 : 厚2×幅10×長150mm

※ 付着・接触の可能性のある薬品については事前に耐薬品性試験を行い、ケミカルストレスクラック性を確認することが重要です。

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